研究概要 |
本研究は、腎特異的発現を示す近位尿細管側底膜のプロスタグランジン(PG)トランスポーターOAT-PGが近位尿細管上皮細胞内のPG分解酵素15-PGDH (15-hydroxy prostaglandin dehydrogenase)と連動して、腎皮質におけるPGE_2局所クリアランスを担いPGE_2シグナルの維持に必須の役割を果たすことを実証する。研究第2年度にあたる平成22年度は、以下の結果を得た。1)OAT-PGと15-PGDHの近位尿細管における共局在の実証。蛍光免疫組織化学的検討を詳細に行い、OAT-PGと15-PGDHの同一組織切片上での共染色の至適な条件を見いだし、マウス腎近位尿細管側底膜での両者の共存について確証を得た。2)免疫沈降法によるOAT-PGと15-PGDHの結合の実証。生化学的には、前年度の細胞画分による検討に加え、HEK293細胞への2X HAタグ付OAT-PGと3X FLAGタグ付15-PGDHの共発現による相互の抗タグ抗体による共免疫沈降、およびマウス腎膜画分からの抗15-PGDHによるOAT-PGの共免疫沈降によって、OAT-PGと15-PGDHの結合にさらに確証を得た。3)OAT-PGの機能特性の検討。OAT-PGをマウス腎近位尿細管由来S2細胞に安定発現させ、OAT-PGの機能特性を検討した。その結果、OAT-PGは、交換輸送体であること、細胞容積測定結果から濃縮性の輸送を行うこと、PGE2に加えPGE1、PGF1α、PGF2α、PGD2、PGB2、PGH2等を輸送すること、15-keto PGE2や13,14-dihydro-PGE2、13,14-dihydro-15-keto PGE2等のPGE2代謝物は輸送しないこと、Clのカルボキシル基が必須であること、及びω-鎖の疎水性が重要であることが明らかになった。OAT-PGがPGE2代謝物は輸送しないことは、腎皮質でOAT-PGによって取り込まれたPGE2が細胞内に結合する15-PGDHにより迅速に代謝され代謝物となると、OAT-PGを介した逆流がおこらず、OAT-PG/15-PGDH複合体が代謝物を尿中に一方向性に輸送するために都合が良い。4)KOマウスの血圧変動。OAT-PGKOマウスは、塩分負荷時に有意な血圧変動が観察された。OAT-PGの病態関連性を示す意義ある事象であり、次年度に引き続き詳細に検討する。
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