研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の分子病態解明と新規治療法の開発を目的として以下の研究を行った。ALSモデル動物であるG93A変異型SOD1遺伝子導入トランスジェニックマウス(Tgマウス)を用いて、Nogo-AおよびそのレセプターであるNgRの時間的空間的な発現様式を解析した。Tgマウスの脊髄前角の運動ニューロンにおけるNogo-A発現は10週齢で一過性に増加し、15-18週齢では進行性に減少した。同様にNgR発現も10週齢で一過性に増加し、15-18週齢では進行性に減少した。対照として解析した脊髄背側部や小脳におけるNogo-A・NgRの発現は病態の進行に応じた変化を認めなかった。以上よりNogo-AおよびNgRの一過性の過剰発現は病的ストレスが加わったALS脊髄において運動ニューロンがより長く生存するために生じた反応である可能性が本研究により初めて示された。また、ニューロンを取り囲む細胞外マトリックスの中で、再生促進や阻害に関与するタンパクの発現パターンをTgマウスの脊髄で経時的に観察し、ニューロン周囲の再生環境を評価した。また、シナプス部位で実際に再生が行われているかを検討した。ALSモデルマウスの脊髄前角では病態の進行と共に再生促進因子γ1-Lamininの増加と再生阻害因子Sema3Aの減少がみられ、ニューロン周囲の環境は必ずしも再生にとって不利ではないことが示唆された。一方、シナプス部位では再生部位に発現するタンパクであるGAP43の発現は増加したが、実際のシナプスを反映するsynaptotagmin1は減少し、効果的なシナプス再生には至っていないことが示唆された。以上の、ALS病態下の運動ニューロン内で特異的に変化している因士や運動ニューロン周囲の環境因子の解析結果は、ALSにおける病的状態から回復するための治療法開発へ向けて重要な知見となりうると考えられた。
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