研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の分子病態解明と新規治療法の開発を目的として以下の研究を行い成果を得た。ALS病変の主座である脊髄の局所血流やグルコース代謝の状態を調べることはこれまで技術的に困難であったが、ALSモデルマウス(G93ASODl Tg)を用いて独自の解析手法により運動障害の各病期毎に検討した.その結果、発症前期の脊髄灰白質において血流低下とグルコース代謝の上昇(flow-metabolism uncoupling)が生じていることを見い出した。ALS病態における血管因子の関与を示す新たな所見であうと共に、本新知見はALSに事ける治療ターゲットにもなり得ると考えられた。また、ALSの運動ニューロン死におけるautophagyの関与を検討するため、autophagyマーカーであるLC3にGFPを結合した蛋白を発現するGFP-LC3 TgマウスとALSモデルであるG93ASODI Tgマウスを掛け合わせたdouble Tgマウスを作製し、ALSモデルマウスの脊髄におけるautophagyの発現様式をin vivoイメージングで観察した。その結果、double Tgマウス脊髄のGFP発光シグナルはALSの病期進行に従って増加し、組織学的にもLC3、p62などautophagosomeのマーカーとよく一致していた。ALSにおける病態を反映したautophagyの新たなin vivo画像化に成功し、臨床応用へ向けてさらに検討を継続していく。さらに、脊髄小脳変性症とALSの臨床的特徴を併せ持つ、新たな遺伝性疾患(Asidan/SCA36)の原因遺伝子(NOP56)およびその遺伝子変異がGGCCTGの6塩基繰り返し配列の異常延長であることをポジショナルクローニングの手法を駆使して発見した。また、Asidan/SCA36患者リンパ芽球核内に延長したGGCCUGリピート転写産物の凝集体であるRNA-fociを認め、さらにRNA-FISHと免疫蛍光法を組み合わせた解析においては、RNA-fociと転写因子SRSF2との共局在を認めた。このことから、本疾患の分子メカニスムとしてRNAレベルの病態(RNA gain-of-function)が示唆された。脊髄小脳変性症とALSの病態解明と治療法開発へ向けて大きな発見となった。
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