ジストニアは、パーキンソン症候群の約4分の1の有病率といわれる決してまれではない病態で、重症化すると著しい日常生活上の障害をきたす重要な病態である。我々が世界で初めて疾患遺伝子TAF-1を明らかにした遺伝性ジストニアDYT3(ルーバッグ病)はわが国でも発症者がでてきており、その病態の解明と治療法の開発は急務である。また本疾患の治療法の開発は他のジストニア一般の画期的な治療法の開発にも結び付く。またDYT3ジストニアの発症機序として我々は大脳基底核線条体のなかでドパミンのセンサーとして働くストリオゾームと呼ばれる部位に特異的な病変を報告したが、TAF-1の変異がどのようにしてこの病変をきたすのかは不明であった。 今回我々は、DYT3の原因遺伝子であるTAF1の変異がジストニア発症に至るメカニズムを明らかにするために、脳内に特異的に発現しているアイソフォームNTAF-1に着目した。本疾患ではこのNTAF-1のみが特異的に発現が低下していることを示し、また正常ラットにおいてこのNTAF-1がストリオゾームに高い発現を示すことから、本症に関して、遺伝子から発症に至る分子メカニズムが初めて明らかになった。 そのほか、ジストニアの新規治療薬としてゾルピデムが有効であることを初めて報告し、DYT3の簡易遺伝子検査を開発した。また1例において深部脳刺激法にて外科的な治療を試みたところ、変性疾患という側面を持つジストニアであるにもかかわらず著効することをつきとめた(論文作成中)。
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