研究課題
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)では、肝移植が現在唯一の治療手段となっているが、これにはいくつかの問題点がある。そこでFAP患者(FAP ATTR V30M, ATTR Y114C)の皮膚から採取した線維芽細胞をiPS細胞化し、FAPの肝細胞置換療法の可能性の検討ならびに細胞レベルでFAPの病態解析を行った。本年の研究結果から、FAP患者から樹立したiPS細胞は、健常人由来のiPS細胞と同様の肝細胞分化パターンを示すことが明らかとなり、本細胞が肝細胞への分化能を有していることが判明した。また、肝細胞の分化過程において、既知の肝細胞マーカー(アルブミンなど)の発現に比べTTRの発現はごく早期から認められ、肝細胞への分化後、異型TTRがmRNAレベルで発現していることが確認された。本細胞はヘテロ接合体のFAP患者から採取した細胞であるため、これをアテロコラーゲンで包埋したsingle stranded oligonucleotides (SSOs)で遺伝子変換を行ったところ、低率ながらも遺伝子変換が認められ、iPS細胞の安定培養法の確立後、SSOsおよびsiRNA TTRなどの核酸を対象に様々な遺伝子導入法を用いた導入効率の改善を行った。さらに、マウスを用いたiPS細胞の移植実験を行い、細胞数は少ないながらも肝臓への生着が確認できた。本年度の結果から、FAP患者由来のiPS細胞を安定的に肝細胞に分化させることが可能となり、遺伝子変換および細胞置換も低率ながら可能になったことから、これらの系を用いて、肝細胞置換療法に向けて、確かな展望が開ける状況が得られた。今後は、本細胞を用いた異型TTRの細胞内挙動・アミロイド形成能の解析と共に(これまでの異型TTRの高発現細胞株はホモの異型TTRを産生する細胞であるため、ヘテロ接合体のFAP患者から採取した本細胞は実際の患者で起こるアミロイド形成機構を解析するツールとして価値がある)、遺伝子変換効率の向上、我々が開発したトランスジェニックラットを用いたin vivoの肝細胞置換療法研究に移る予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (23件) (うち査読あり 20件) 学会発表 (9件) 図書 (4件)
Hum Pathol
巻: 43 ページ: 96-104
Neurology
巻: 78 ページ: 637-43
10.3892/or.2012.1684
Lab Invest
巻: 92 ページ: 474-84
10.1038/labinvest.2011.195
Pancreas
巻: (掲載確定)
Amyloid
Ther Apher Dial
巻: 16 ページ: 159-62
10.1111/j.1744-9987.2011.01039.x
Mol Pharm
Biochem J
巻: 437 ページ: 35-42
Muscle Nerve
巻: 43 ページ: 449-450
Hypertens Res
巻: 34 ページ: 133-138
Human Pathol
巻: 42 ページ: 1259-1264
巻: 18 ページ: 165-168
Mod Pathol
巻: 24 ページ: 1533-1544
10.1038/modpathol.2011.117
Liver Transplant
巻: 17 ページ: 122-128
10.1002/lt.22184
Surg Today
巻: 41 ページ: 1211-1218
10.1007/s00595-010-4488-5
Clin Exper Nephorol
巻: 15 ページ: 774-779
10.1007/s10157-011-0483-4
巻: 91 ページ: 1219-1228
10.1038/labinvest.2011.71
巻: 18 ページ: 183-190
10.3109/13506129.2011.614294
Acta Derm Venereol
巻: 91 ページ: 201-203
10.2340/00015555-1011
Clin Neurol Neurosurg
巻: 113 ページ: 139-141
10.1016/j.clineuro.2010.08.018
臨床神経
巻: 51 ページ: 1138-1141
10.5692/clinicalneurol.51.1138
日本内科学会雑誌
巻: 100 ページ: 3276-3283
BRAIN and NERVE
巻: 63 ページ: 583-595