研究課題
家族性パーキンソン病の中にあってParkinとPINK1を原因遺伝子とする若年発症パーキンソン病はミトコンドリア機能異常がその病態の中核をなす疾患として注旨されている。PINK1は損傷ミトコンドリアを認識し除去(ミトファジー)することにより細胞内環境を健全に保つ機能を有する。その一方で、ミトコンドリアにも局在するPINK1自身がミトコンドリア機能にいかに関与しているかは未だ不明な点が多い。そこで本年度はPINK1ノックアウトMEFを用いて呼吸鎖や膜電位への影響を以下のように検討した。1)PINK1ノックアウトマウス胎児由来のMEF細胞を不死化し、PINK1ノックアウト株と野生株をグルコース培地とガラクトース培地で培養することによりミトコンドリア呼吸依存的な増殖率を比較した。2)ミトコンドリアを抽出しOxygen MeterとMitocell MT2000により単位細胞当たりの酸素消費を定量することにより呼吸能を比較した。MEFからミトコンドリア分画を抽出し単位ミトコンドリア当たりの呼吸機能をModular Kinetic Anaiysisにより測定した。3)MEFの単位細胞あたりのROSの産生とプロトンリークを測定し比較した。また免疫染色によるミトコンドリアの形態や膜電位の変化を観察した。その結果、PINK1ノックアウトMEFではガラクトース培地にて増殖の低下が顕著であった。またミトコンドリアからのプロトンリークやATP合成能には変化は認められないものの、基質酸化能は低下していることが判明した。さらにはミトコンドリアの膜電位も2次的低下を認めると共に、細胞当たりのATPは約80パーセントに低下していた。このような膜電位の低下した異常ミトコンドリアは本来であればミトファジーによって除去される運命にある。PINK1自身の機能が十分でない場合はミトファジーを誘導できなくなるため、異常なミトコンドリアを除去できずに結果として細胞内に蓄積する。この悪循環による異常ミトコンドリアの蓄積が若年発症の原因の一因であると推測される。このような異常ミトコンドリアを蓄積するPINK1ノックアウトMEFはパーキンソン病のモデル細胞として今後の病態解析に有用である.
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