研究概要 |
感覚障害性運動失調性ニューロパチーにみられる抗GD1b抗体の後根神経節細胞に対する作用を検討するため、正常のウサギから後根神経節を採取し、常法に従い(Sango K et al, Exp Neurol 2003 ; 182 : 1-11など)細胞培養を行った。培養系に失調性ニューロパチーをきたしたウサギ血清から精製した抗GD1b抗体を入れて、形態学的変化を検討した。その結果、培養早期の神経細胞を前記の抗体で処理した場合に、神経突起に形態的異常が観察された。対照のウサギIgGではそのような所見はみられなかった。現在その形態異常がどのようなメカニズムで生ずるかを詳細に検討している。一方、近年われわれは、ガングリオシド単独ではなく複数のガングリオシドの糖鎖が相互作用して形成するエピトープ(ガングリオシド複合体)を特異的に認識する抗体をGuillain-Barre症候群(GBS)あるいはFisher症候群で報告しているが、今年度眼球運動麻痺を伴うGBSあるいはFisher症候群で、GQ1bやGT1a単独に対するよりもGA1との混合抗原(GA1/GQ1bやGA1/GT1a)により強い反応性をもつ抗体の存在を見出した。単独抗原には全く反応せず、GA1との混合抗原にのみ反応を示す場合もあることから、GA1との混合抗原に対する抗体も検討項目に入れることがFisher症候群および関連疾患の診断に有用と考えられた。またGA1/GQ1bやGA1/GT1aに強く反応するが、GM1との混合抗原では反応が増強しない例もあり、基本糖鎖の内側に結合するシアル酸の存在が、エピトープの認識に重要と考えられた。これまでGBSおよび関連疾患でガングリオシド複合体抗体の有無を検討してきたが、今年度CDIPでも一部の複合体に対する抗体陽性例の存在を見出した。今後多数例で検討する予定である。
|