研究課題/領域番号 |
21390273
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
楠 進 近畿大学, 医学部, 教授 (90195438)
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研究分担者 |
河原 佐智代 近畿大学, 医学部, 講師 (60297629)
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キーワード | ガングリオシド / Guillain-Barre症候群 / Fisher症候群 / 運動失調 / 後根神経節 / 自己抗体 / 感覚障害 / 糖脂質 |
研究概要 |
抗GD1b抗体の作用による感覚障害性運動失調性ニューロパチーの病態メカニズムを解明するため、既法によりGD1b感作によるウサギ運動失調性ニューロパチーモデルを作成し、発症したウサギから後根神経節を採取してmRNAの発現を解析した。アジュバントのみを投与したウサギおよび感作なしのウサギを対照とした。深部感覚を伝える後根神経節の大型細胞の生存に関わるNT-3および関連分子の発現を解析中である。また、PC12細胞を用いて、軸索障害型ギラン・バレー症候群(GBS)患者血清中の抗GM1抗体の作用を検討した。その結果抗GM1抗体を作用させた細胞では、NGFによるTrkのリン酸化が阻害され、細胞膜のラフトの構造にも変化がみられることが明らかとなった。従って、免疫性ニューロパチーの病態における抗ガングリオシド抗体の作用として、抗体結合に引き続き補体系が関与して膜障害を引き起こすというメカニズム以外に、細胞内のシグナル伝達に対する影響も考慮する必要が示唆された。一方、近年われわれは、ガングリオシド単独ではなく複数のガングリオシドの糖鎖が相互作用して形成するエピトープ(ガングリオシド複合体)を特異的に認識する抗体をGuillain-Barre症候群(GBS)あるいはFisher症候群で報告している。今年度は、末梢神経のミエリンに局在する糖脂質であるLM1に焦点を当て、従来標的分子についての情報の少ない慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)における血中抗体の検討を行った。その結果、CIDPおよびGBSの急性期の約2割程度の症例で、LM1あるいはGM1やGD1bとLM1の複合体に対するIgG抗体が上昇していることがわかった。GBSの陽性例は脱髄型であった。LM1およびLM1を含むガングリオシド複合体は、脱髄型の免疫性ニューロパチーの重要な標的と考えられた。
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