研究課題
抗GDlb抗体の作用による感覚障害性運動失調性ニューロパチーの病態メカニズムを明らかにするため、GDlb感作によるウサギ運動失調性ニューロパチーモデルを作成し、発症したウサギから得た後根神経節におけるmRNAの発現を解析した。アジュバントのみを投与したウサギおよび感作なしのウサギを対照とした。深部感覚を伝える後根神経節の大型細胞の生存に関わるNT-3のレセプターであるTrkCやその上流のRunxについて調べたが、明らかな差は見出されなかった。抗GDlb抗体の作用は後根神経節大型細胞に特異的におこるため、今後大型細胞を選択的に集めてさらに検討する予定である。一方、近年われわれはガングリオシド単独ではなく2種類のガングリオシドの糖鎖が形成するエピトープ(ガングリオシド複合体)を特異的に認識する抗体をGuillain-Barre症候群(GBS)あるいはFisher症候群で報告している。今年度われわれは、抗ガングリオシド複合体抗体(抗GMl/GDla抗体と抗GMl/GQlb抗体)の、マウス横隔膜標本における神経筋伝達への作用を検討し、伝達を阻害することを報告した。この結果は、ガングリオシド複合体が神経細胞膜上に形成されており、抗ガングリオシド複合体抗体が神経細胞膜上で障害性に働くことをはじめて明らかにしたものである。また、従来抗ガングリオシド複合体抗体は、ELISAプレート上で、あるいは薄層クロマトグラム上で形成された抗原エピトープに対する反応によってしか解析できなかったが、今年度イタリアのグループとの共同研究により、GMlとGDlaを結合して作成したGMl-GDlahybridがガングリオシド複合体と同様の糖鎖構造をもつことを示した。この2つのガングリオシドのhybridは、今後のガングリオシド複合体の詳細な構造解析や神経系における分布の解析に有用と考えられる。またLMlあるいはLMlを含む複合体に対する抗体陽性例の臨床像も明らかにした。
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