研究概要 |
代表者らは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疾患進行にグリア細胞の病的変化が関与することを明らかにしてきた.本研究はその成果に立脚し,神経-グリア連関の破綻による神経変性機構の解明を目指す.今年度は,マウスES細胞由来運動ニューロンの分化誘導系の構築を行った.遺伝性ALSモデルの変異SOD1マウスからES細胞を樹立し,運動ニューロンへの分化に必要な転写因子HB9の発現を指標に運動ニューロンへの分化誘導を検討した.既報告の通り分化誘導効率は高くないものの,分化誘導が起こることを確認できた.今後は運動ニューロンの生存期間や,グリア細胞共存下での検討を行う.植物由来化合物ライブラリーを用いた変異SOD1タンパク質の異常を軽減する研究について,代表的な疾患関連SOD1変異体を対象に,大腸菌での異常蛋白質ストレス応答と,in vitroでの異常化評価系の検討を行った.その結果,SOD1変異体の異常化を誘導するストレッサーを見いだすとともに,異常化抑制能を有する化合物を見いだした.現在,in vitroでの効果を検討中である.モデルマウスに関する研究は,ミクログリアの遊走に関与し,他の神経変性疾患の病態を修飾することが知られているニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の役割を検討した.変異SOD1マウスの疾患進行におけるα7nAChRの役割を検討するため,SOD1^<G93A>マウスとα7nAChR KOマウスとの交配実験を行い,ALS早期症状の期間(病気発症日~体重の10%減少日)とALS後期症状の期間(体重の10%減少日~死亡日)を解析した.後期症状において,SOD1^<G93A>/α7nAChR KOマウスはSOD1^<G93A>マウスに比べて期間が延長する傾向が見られ,この受容体がALSの疾患進行に関与していることが示唆された.
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