研究概要 |
代表者らは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疾患進行にグリア細胞の病的変化が関与することを明らかにしてきた.本研究はその成果に立脚し,神経-グリア連関の破綻による神経変性機構の解明を目指す.今年度は,変異SOD1マウスの疾患進行における2種のグリア関連遺伝子の役割を検討した。これまでの解析で細胞外マトリックスの分解酵素であるMMP12が,SOD1マウスの病巣のミクログリアに高発現することを見いだしている.そこで神経変性における役割を検討するために,MMP12KOとSOD1G93Aマウスの交配実験を行い,生存期間や疾患進行への影響を検討した.MMP12の除去により変異SOD1マウスの生存期間が短縮する傾向がみられたが,統計学的な有意差には至らなかった.変異SOD1マウスの疾患進行におけるa7 nAChRの役割については,前年に引き続き、SOD1^<G93A>マウスとa7 nAChR KOマウスの交配実験の例数追加を行い,ALS後期症状期間に延長(15.7日)が見られることが確認された。さらにそのメカニズムを解明するために、初代培養ミクログリアの遊走活性を測定したところ,ATP誘発性の遊走はニコチンの併用により濃度依存性に抑制されることを見出した.また,大腸菌発現系を用いて異常タンパク質ストレス応答をモニターできる系を樹立した.この実験系を用いて,疾患変異SOD1の発現によって,Metal-Catalyzed Oxidationによる酸化に伴うストレス応答レベルの上昇を確認した.さらに,天然物由来の低分子化合物ライブラリーを用いて,そのストレス応答を促進,軽減する低分子化合物を見いだした.次年度はその機序の解明と,マウス由来運動ニューロンに対する保護効果の検討を計画している
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