研究課題/領域番号 |
21390275
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島野 仁 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20251241)
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研究分担者 |
中川 嘉 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80361351)
飯田 薫子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (50375458)
松坂 賢 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70400679)
石井 清朗 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80419150)
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キーワード | 脂肪酸 / インスリン感受性 / 動脈硬化 / 食欲 |
研究概要 |
生活習慣病や動脈硬化リスク形成の根源的病態として、各臓器における脂質蓄積(脂肪毒性)が重要とされる。本研究では、組織に蓄積した脂質について、脂肪酸伸長酵素Elovl6を介した「量」でなく「質」的側面に焦点をシフトし、エネルギー代謝の制御や病態に重要な脂肪酸やその組成を特定し、新しい視点からの生活習慣病、動脈硬化治療の立案を目指した。本研究において、肝臓特異的Elov16欠損マウス、脳特異的Elov16欠損マウス、骨髄移植による血球系細胞特異的Elov16欠損マウスを作製し、それぞれ脂肪肝・インスリン抵抗性、食欲、動脈硬化への影響を検討した。肝臓特異的Elov16欠損マウスの肝臓では、パルミチン酸(Cl6:0)、パルミトオレイン酸(Cl6:ln-7)の増加やステアリン酸(Cl8:0)、オレイン酸(Cl8:ln-9)の減少が確認された。Elov16全身欠損マウスと異なり、肝臓特異的Elov16欠損マウスでは高脂肪・高ショ糖食負荷によるインスリン抵抗性が改善されなかった。一方、高ショ糖食負荷では、floxマウスに比べて肝臓特異的Elov16欠損マウスのインスリン感受性は亢進した。脳特異的Elov16欠損マウスでは食餌嗜好性の変化が認められ、脳の脂肪酸組成と食行動に関する新しい知見が得られつつある。血球系細胞特異的Elov16欠損マウスでは動脈硬化の発症が抑制され、これはElov16の欠損によりマクロファージのコレステロール排出が亢進し、泡沫化が抑制されるためであることを見出した。今後、これら組織特異的Elov16欠損マウスの機能解析を引き続き進めることで、脂肪酸の新たな生理機能の解明や脂肪酸の質の制御による生活習慣病の新規予防・治療法の開発が期待される。
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