研究課題
本研究は可溶型ファミリー受容体による新規の動脈硬化治療を展開するための分子基盤を明らかにすることを課題とした。1)血管壁細胞の運動能調節における可溶型ファミリー受容体の役割これまでに我々は、平滑筋細胞が病的形質変換を起こすことで制御されない遊走、増殖を介して動脈硬化を促進することを示した。この平滑筋細胞の形質変換にともなう新たな機能獲得や機能喪失は平滑筋細胞のみならず、動脈硬化に関わる他の血管壁細胞の機能も修飾する。今年度はそのような視点から、平滑筋細胞とともに動脈硬化を進展させる細胞であるマクロファージの機能修飾から可溶性ファミリー受容体の役割を検討した。樹立単球/マクロファージ細胞であるTHPI細胞やU937細胞においてリコンビナント可溶性LR11は細胞膜ウロキナーゼ受容体の局在と複合体を形成し、ウロキナーゼ受容体とさらに複合体形成するインテグリンCD11bを介してこれらの細胞の運動能を亢進することが明らかになった。本機能調節は、正常の単球/マクロファージ機能を調節する重要な役割を担うとともに,その継続した刺激は動脈硬化を促進する可能性があることから、可溶性LR11の測定が動脈硬化の新たなバイオマーカーとなるとともに、その機能を修飾することが動脈硬化の新たな標的治療となる可能性がある。2)脂肪細胞におけるLDL受容体ファミリーによる機能修飾と血管壁細胞との連関LR11マウスは、生後8週から腸間膜、傍精巣および皮下脂肪組織の重量は野生型マウスに比べて脂肪量が少なく、とりわけ皮下脂肪の減少が著明であることが明らかになった。さらに、特徴的な変化として、皮下白色脂肪で多房性の脂肪蓄積を示し、皮下脂肪内褐色脂肪が異所性発現していることが示された。このように、白色脂肪細胞の分化障害により脂肪蓄積および炎症性サイトカイン産生が変化することが明らかになり、可溶性LR11は、平滑筋細胞/単球/脂肪細胞の機能をお互いに制御しながら、その破綻が動脈硬化の進展に結びつくと考えられる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Exp Cell Res
巻: 318 ページ: 8-15
DOI:10.1016/j.yexcr.2011.10.007
Am J Ophthalmol
巻: (in press)
Am J Physiol Cell Physiol
巻: 301 ページ: C181-C185
10.1152/ajpcell.00080.2011