研究概要 |
研究代表者は転写因子であるHNF-4α、HNF-1α、HNF-1βの遺伝子異常により、それぞれMODY1、MODY3、MODY5が発症することを明らかにし、これらHNF転写因子が膵β細胞からのインスリン分泌に必須であることを明らかにした(Nature 1996a, Nature 1996b, Nature Genet.1997)。しかし膵β細胞におけるHNF-4の標的遺伝子については全く不明であった。 HNF-4α標的遺伝子を同定する目的で、膵β細胞特異的HNF-4αノックアウトマウス(J Biol Chem.2006)から膵島を単離し、マイクロアレイによる解析を行なった。その結果、膵β細胞における新規標的遺伝子として、機能未知の遺伝子であるAnks4bを同定することに成功した。Anks4bの機能を明らかにするために、GST-Anks4b融合蛋白質を用いたpull downアッセイを行った。質量分析器を用いてAnks4b結合蛋白質の検索を行ったところ、ERシャペロンであるGRP78が同定された。Anks4bとGRP78の結合は免疫沈降法によっても確認され、細胞内においてAnks4bはGRP78と結合しているものと考えられた。Anks4b過剰発現β細胞にERストレスを加えたところ、通常のβ細胞に比してERストレスが増強し、アポトーシスを起こす細胞が増加していた。HNF-4α新規標的遺伝子であるAnks4bはERストレス感受性を制御する機能を有していることが明らかになった。
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