研究概要 |
昨年度までの研究でアンジオテンシンII(AngII)などの心血管ホルモンが、ミトコンドリア,ペルオキシソーム,オートファゴソームなどの細胞内小器官(オルガネラ,Organele)を制御することを見出し、その結果として生じる細胞代謝の変化が、メタボリックシンドロームないしはその合併症の発症進展に関与することを明らかにした。本年度も引き続き、心血管ホルモン関連シグナルのオルガネラ制御における意義を詳細に検討した。 心血管ホルモンによる血圧調節において重要な意義を有する分子である低分子量GタンパクRhoの動脈硬化発症における意義を一貫して研究し、本年度はRhoとその下流分子ROCKの脂肪細胞における意義を検討した。脂肪組織特異的にROCKを抑制したマウスを作成したところ、脂肪細胞由来のミトコンドリア活性化因子であるアディポネクチン血中濃度の上昇と、肥満への抵抗性ならびにインスリン感受性の改善が認められることを見出した。3T3-L1細胞を用いた更なる検討で、肥満を模倣するメカニカルストレッチ(ストレッチチャンバーによる細胞伸展刺激)によりRho/ROCKシグナルが活性化し、脂質蓄積を促進することを見出した[Hara et al. Science signazling 2011]。 血管収縮ホルモンであるAngIIの活性化に関与する因子であるプロレニンの受容体である(プロ)レニン受容体((pro)renin receptor:PRR)を腎糸球体足細胞特異的に欠損したマウスを作成し腎機能を検討したところ、PRRを欠損したマウスでは足細胞でのライソソーム蓄積を伴う糸球体構造変化が生じ、PRRホモ欠損マウスでは生後30日程度で死亡する致死的腎不全を発症することを見出した[Oshima et al JASN 2011]。 これらの結果は心血管ホルモンが細胞代謝の調節を介してメタボリックシンドロームとその合併症の発症進展に関与することを示しており、その過程で心血管ホルモンによる細胞メカニカルストレスならびに細胞内オルガネラの制御が関与することを示唆している。
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