研究課題
グレリンは胃から分泌される摂食亢進ホルモンで、これまでのわれわれの研究から自律神経の恒常性維持に必要なホルモンであることが明らかになった。本研究では、低栄養状態においてグレリンがどのような役割をもつのかを明らかにする目的で、時間制限給餌(restricted feeding,RF)実験を行った。野生型マウスでは、RFの時間経過とともに胃の湿重量およびその体重比が著しく増加した。胃湿重量の体重比がRFの時間経過とともに著しく増加したことは、RFの適応に胃が早い段階から適応する可能性を示している。また、胃を主要な産生組織とするグレリンも、RFの時間経過とともに分泌が亢進した。一方で、グレリンが欠損していると、実験期間前半において、体温が低下すべき空腹期において体温低下が抑えられるのに対し、逆に、実験期間後半では、摂餌をしても体温の上昇が小さい。さらにわれわれは、グレリン投与が体温低下作用を持つことや、グレリン欠損マウスでは絶食時の体温低下が小さいことなどもすでに明らかにしている。これらのことから、低エネルギー状態では、グレリンが体温を低下させることでエネルギーの保持に作用しているものと考えられる。その他、次のような研究成果を得た。Dahl-Iwai食塩感受性ラットにおいて、グレリン受容体阻害剤を連続投与すると、食塩感受性高血圧の発症が早くなることを見出した。このときカテコールアミン合成系の遺伝子発現が上昇しているので、自律神経活動の増加が早期高血圧発症の原因の一つになっていると考えられた。レット症候群は遺伝子変異による進行性の神経疾患で精神遅滞や運動障害がみられる。レット症候群では様々な消化器症状や摂食障害が認められるが、血中グレリン濃度を測定したところ非常に低値であった。レット症候群の症状との関連が示唆される。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (2件)
Metabolism
巻: 61(4) ページ: 491-5
J Biochem
巻: 151(2) ページ: 119-28
Domest Anim Endocrinol
巻: 42 ページ: 74-82
Peptides
巻: 32(11) ページ: 2175-82
Int J Dev Neurosci
巻: 29(8) ページ: 899-902
J Mol Neurosci
巻: 43(2) ページ: 193-9
Anim Sci J
巻: 82 ページ: 267-273
巻: 41 ページ: 50-55
Regul Pept
巻: 167 ページ: 140-148
Clin Endocrinol (Oxf)
巻: 74 ページ: 453-458