研究概要 |
転写因子Ebf1,Pax5の発現によりB細胞分化が最終決定される以前の未分化な造血細胞において、ポリコーム群蛋白Bmi1がEbf1,Pax5の発現抑制状態を維持することにより分化の多能性が維持されることが明らかとなった。すなわちクロマチン免疫沈降法(ChIP)を用いたPcGのEbf1,Pax5プロモーターへの局在と同プロモーターのヒストン修飾制御(K4me3,K9Ace,K27me3,H2AK119 ubiquitination)の詳細な解析から、ES細胞に認められるbivalent domain様ヒストン修飾による可逆的な遺伝子発現抑制と多能性維持が、造血幹細胞においても見られることを確認した。この現象がB細胞系への分化に限らず造血幹細胞の分化全般に当てはまるものであるのか今後の検証課題である。また、造血細胞特異的にポリコーム遺伝子Ezh2をKOしたマウスを解析したところ、胎仔肝においてPcGの重要な標的遺伝子Ink4a/Arfが脱抑制し、造血幹細胞の増幅が著しく抑制され、胎仔は胎生13.5-14.5日に死亡することが明らかとなった。しかし、成体でEzh2をKOしてもInk4a/Arfの発現はかわらず、造血幹細胞の明らかな異常は認められなかった。したがって、胎仔肝と骨髄におけるPcGによるInk4a/Arf発現制御は異なるものと考えられ、このエピジェネティクス制御の違いについて現在解析を進めている。
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