研究概要 |
自己免疫性再生不良性貧血(再不貧)患者において、造血幹細胞を傷害する細胞傷害性T細胞(CTL)の標的抗原をスクリーニングするため、免疫病態の関与が濃厚な再不貧患者の顆粒球由来DNAを用いて、体細胞遺伝子におけるコピー数異常の有無をSNPアレイによりスクリーニングした。その結果、過去のMDS例などの解析では全く認められなかった6番染色体短腕(6p)の片親二倍体(uniparental disomy, UPD)が多くの例で検出された。この6pUPD領域には例外なくHLAのクラスI領域が含まれていた。このため、A抗原特異的抗体とフローサイトメトリー用いて、6pUPD陽性例におけるHLA-A抗原の発現をアレル別に調べたところ、片側のHLAアレル発現を欠く白血球が全ての血球系統に検出された。自験例と、日本骨髄移植財団(JMDP)に保存されていた再不貧患者DNA計307例を調べたところ、6pUPDは15%,に認められ、そのうち新鮮血の解析が可能であり、かつHLA-Aがヘテロ接合体であった35例では、全例でHLA欠失血球が検出された。 このHLA欠失の意義を明らかにするため、全症例についてHLAのアレルをタイピングし、HLA遺伝子近傍のSNPパターンから6pUPD陽性症例のハプロタイプを決定したところ、欠失しているハプロタイプには、A^*02:01、A^*02:06、A^*3101、B^*40:02の4アレルが特に高頻度に含まれていることが明らかになった。そこでJMDPに登録された再不貧407例について、これら各アレルの頻度を、再不貧以外の全疾患における頻度と比較したところ、再不貧における相対危険度が1.37から1.95と有意に高値であった。したがって、これらの4HLAクラスI遺伝子は、それぞれが再不貧の疾患感受性遺伝子であることが明らかとなった。これらの結果から、A^*02:01、A^*02:06、A^*3101、B^*40:02のいずれかを持つ再不貧患者の骨髄・末梢血中には、これらのHLAクラスIによって提示される自己抗原に特異的なCTLが存在している可能性がある。そこで、患者自身のCD34陽性細胞や、これらのHLA抗原を発現させた白血病細胞株を用いてCTLを増幅させ、cDNAライブラリーを用いた発現クローニングにより、T細胞の対応抗原の同定を試みている。
|