本年度は血液流動の恒常性に関わるプロテインC凝固制御系因子のうち、プロテインS(PS)とPS活性を制御するC4b結合蛋白質β(C4BPβ)の感染時における肝細胞での発現変化、ならびに血管内皮細胞の機能調節に関わる細胞間ギャップ結合(GJ)構成分子Connexin32(Cx32)の機能に及ぼす活性化プロテインC(APC)とトロンボモジュリン(TM)の影響を解析した。 1.感染時における肝細胞でのPSとC4BPβの発現動態の解析 感染時に血中に増加するリポ多糖は肝細胞におけるPSの産生を抑制し、C4BPβの発現を促進した。また、リポ多糖刺激によって肝細胞で発現されるIL-6は肝細胞におけるPSおよびC4Bβの発現量を増加させた。この結果から、感染時には血中のPS-C4BPβ複合体濃度が増加してPS活性が低下し、血液凝固亢進状態(血栓症)を誘引することが示唆された。 2.Cx32の発現と血管内皮細胞の機能に及ぼすAPCとTMの影響の解析 APCとTMが有する細胞保護作用の分子機構を解明するために、血管内皮細胞の機能を調節するGJ蛋白質のCx32の発現に及ぼすAPCとTMの影響を解析した。その結果、APCならびにTMは、血管内皮細胞におけるCx32のmRNAと蛋白の発現量には有意な影響を与えなかったが、蛍光低分子物質の細胞間移動を指標にしたGJの機能を有意に亢進した。この結果から、APCやTMの細胞保護作用にはCx32以外の分子によるGJを介した細胞間相互作用が関与している可能性が示唆された。
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