研究課題/領域番号 |
21390293
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前川 平 京都大学, 医学研究科, 教授 (80229286)
|
研究分担者 |
平位 秀世 京都大学, 医学研究科, 助教 (50315933)
芦原 英司 京都府立医科大学, 医学研究科, 講師 (70275197)
木村 晋也 佐賀大学, 医学部, 教授 (80359794)
|
キーワード | 慢性骨髄性白血病 / 低酸素環境 / 白血病幹細胞 / 分子標的治療 |
研究概要 |
ABLチロシンキナーゼ阻害剤は慢性骨髄性白血病(Chronic Myeloid Leukemia ; CML)の標準的治療となっているが、CML幹細胞や、IMの結合部位であるABLキナーゼドメイン(KD)に生じるT315I変異にはいずれの薬剤も無効である。今回、われわれはCML幹細胞やT315I変異に対しても有効な薬剤の開発を目的として、Glyoxalase-I (Glo-I)阻害剤およびABL/Aurora/JAK2阻害剤であるAT9283に注目し、それらの効果について検討した。CML幹細胞は骨髄内の低酸素環境に存在している。そこで低酸素環境適応CML細胞株を樹立したところ、GO期の増加、βカテニン発現量の増加や異種移植効率の増加、チロシンキナーゼ阻害剤への耐性の獲得などCML幹細胞としての特徴が明らかとなった。これらの細胞株では解糖系で生じたmethylglyoxalを代謝するGlo-I活性が亢進していた。methylglyoxalは細胞毒性を有するため、Glo-I阻害が低酸素下の細胞増殖に抑制的に作用することが予想された。実際にGlo-I阻害剤は低酸素適応CML細胞株の増殖を有意に抑制することが判明した。AT9283はT315I変異BCR/ABLを発現するBAF細胞やCML細胞株にアポトーシスを誘導することによって有意にそれらの増殖を抑制した。その効果はAuroraキナーゼの阻害のみならず、ABLキナーゼの阻害を介していることも明らかとなった。CML患者および正常骨髄細胞を用いてコロニー形成能を検討したところ、CML患者骨髄細胞は正常に比べIC_<50>値が約1/5倍で、安全域が充分保たれることが判明した。Glo-I阻害剤およびAT9283はCML幹細胞やT315I変異などの治療抵抗性CMLに対して有効であると考えられ、今後の臨床応用が期待される。
|