研究課題
前年度に引き続き、ドナーT細胞の活性化に関わるToll likereceptor (TLR)を介するシグナルの関与についてマウスモデルを用いて検討した。MHC不適合のB6ドナーからB6D2F1レシピエントへの骨髄移植モデルにおいて、T細胞上のTLR2の発現をフローサイトメトリー法で検討したところ、ドナー由来T細胞のTLR2の発現亢進が認められた.これはレシピエント由来T細胞には認められず、アロ抗原特異性が示唆された。次にT細胞サブセット別に検討し、CD4+、CD8+T細胞両者でTLR2の発現亢進を認めた。ノックアウトマウス,野生型マウスより採取した両者のmixing experimentを行ったところ、CD4+、CD8+T細胞におけるTLRの発現の両者ともにGVHDの重症化に関与することが明らかとなった。一方、同種造血幹細胞移植後の急性GVHDはドナーT細胞のTh1応答性を主体としたエフェクター機序によって発症するが、慢性GVHDについては明らかではなく、今回、MHC適合のB10.D2→BALB/cの慢性GVHDモデル系を用いて検討した。慢性GVHD発症時のドナーT細胞のサイトカイン産生パターンを検討したところ、移植後早期のTh1,Th2応答性に引き続くTh17応答性がみられ、とくに肝臓、肺へのTh17細胞浸潤が顕著であった。IFN-γ/-,IL-17-/-マウスから分離したT細胞を投与したところ、皮膚、唾液腺の病変の軽減がみられた。合成レチノイドであるAm80はTh1,Th17応答性を抑制することが知られている。Am80の投与で慢性GVHD病変の抑制が可能であった。以上の結果から、Th1,Th17応答性は慢性GVHDの病態形成に関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、1)conventional DCs以外により新たなドナーT細胞活性化のメカニズム,2)TLRシグナルによるT細胞のダイレクトな活性化の2点が研究の主柱であり、1)については、形質細胞様樹状細胞によるT細胞活性化とそのメカニズムに関して一定の成果を示すことができた。2)についても、ほぼ証明されつつあるが、まだその分子メカニズムについては更なる研究が必要である。
上記課題2)について研究を継続する。In vitroでCD3+28刺激によるAPC-freeのT細胞刺激系にTLR hgandを加え、CFSE解析を指標としたT細胞活性化を定量化できる系を確立する。これを用い最適な条件下で、WT-T、KO-T細胞の遺伝子発現をmicroarray法で比較し、T細胞上のTLRシグナルによるT細胞活性化に関わる分子を同定する。
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