研究概要 |
IL-6阻害治療とDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析、ならびにバイオインフォマティクスを用いて、関節リウマチ(RA)の病態解析を昨年度に引き続き行った。その解析から特定された分子s100ファミリー分子についてin vitroにおける機能解析を行った。また全身性エリテマトーデス(SLE)の細胞機能異常について検討した。 1) RA患者の末梢血細胞のサイトカインネットワーク異常の検討:gene ontologyに基づく細胞機能異常を検討した。 (1) RA患者末梢血では健常成人に比べ3,479個の遺伝子の発現が増加し、3,418個の遺伝子発現が減少していた。発現が低下していた分子は、主にmetabolism関連分子で、その中にはRNA metabolism、protein biosynthesis、nucleocytoplasmic transport関連分子が含まれていた。一方、増加していた分子はion transport、 morphogenesis、 cell adhesionに分類された。cadherinあるいはprotocadherinファミリーの発現が増加し、TNF、TGFbeta, VEGF、 hepatocyte nuclear factor(HNF)4αがcell adhesion関連分子のネットワークの調節に関わっていることがわかった。 (2) GWAS解析により同定されたRA感受性遺伝子(CD244, PADI4, SLC22A2, PTPN22, CTLA4, STAT4)の発現をDNAマイクロアレイで検討した。CTLA4以外は発現異常と関連し、遺伝子発現解析とGWASの組み合わせにより、疾患感受性遺伝子のより正確な解析が可能になると思われる。 2) SLE患者の末梢血でインターフェロンとTNFのネットワーク異常を明らかにした。サイトカイン以外ではperception of sound、response to radiationの機能の低下が見られた。また、SLEにおいてもミトコンドリアの機能異常の存在を見出した。これらの分子の発現は、TNFやIL-6などの炎症性サイトカインの影響をうけない。 3) 抗菌ペプチドであるdefensin α1, α3はIL-6阻害治療により過剰発現が正常化した。リコンビナントのdefensin α1, α3を作製し、これらの機能を検討中である。
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