宿主生体内で増殖する結核菌や非結核性抗酸菌においては、宿主由来のグルコースを基質としたミコール酸転移反応の結果、グルコースモノミコール酸が産生されることを見出した。そこでこのグルコースモノミコール酸に対する獲得免疫応答を検証する研究を展開した。まずグルコースモノミコール酸をエンドソーム非脱出性リボソームに組み込むことにより効率的に樹状細胞に取り込まれ、CD1b分子を介して特異的T細胞に抗原提示されることを明らかにした。次いで、モルモットにBCGワクチンを接種し、6週後にリボソームに封入したグルコースモノミコール酸を皮内投与したところ、2日目をピークとした皮膚の硬結、腫脹を認め、組織学的には、ツベルクリン反応と同様、単核球の浸潤を主体とした炎症であった。この応答はBCG非接種モルモットでは観察されないことから先行感染を必要とするメモリー応答であり、糖脂質を標的とした新規の遅延型アレルギー応答であることが確認された。所属リンパ節より採取したT細胞をグルコースモノミコール酸で刺激したところ、インターフェロンガンマなどのTH1サイトカインの産生を認めたが、インターロイキン5やインターロイキン10などTH2サイトカインの産生をまったく認めなかった。TH1サイトカインの選択的発現は結核防御に重要であることから、グルコースモノミコール酸が抗結核糖脂質ワクチンの候補分子として有望であることが示された。
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