研究概要 |
1,スタチンの標的細胞である単球を用いた形質変化に関わる発現蛋白質の解析:ヒト単球系細胞(THP-1)に対して、インターフェロン(IFN)-γの刺激または非刺激の元に各種のスタチン系薬(simvastatin,pravastatin,mevastatin,lovastatin)が暴露することでどのような形質変化を誘導するか検討した。その結果、IFN刺激を受けたTHP-1に対してsimvastatinやmevastatin(共に5μM)はHLA-DR(MHCクラスII分子)の発現を選択的に増強することが確認された。さらに、同一条件にてlovastatinやpravastatin(共に5μM)はHLA-DRのみならずCD80(樹状細胞マーカー)の発現も高めることが判明した。このような結果の相違を踏まえて解析した所、simvastatinと比較してlovastatinはより高度にインターロイキン(IL)-1受容体関連タンパク2(IL-1Rrp2)の発現を誘導する知見が得られた。以上より、lovastatinはIFN刺激下のTHP-1に対してIL-1Rrp2発現を誘導することで樹状細胞への分化を促進する可能性が示唆された。 2,ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)感染細胞を用いたスタチン作用に関わる発現蛋白質の解析と候補分子の関与度:ヒト胎児肺線維芽(HEL)細胞とhCMV(Towne株)・スタチン(simvastatin,濃度0.1-1.0-10μM)またはプラセボとの共培養を行い、経時的(感染後9→24→48→72時間)に発現蛋白質を解析した。その結果、hCMV感染のHEL細胞に対してsimvastatinは宿主に由来するCXCL-11(ケモカインリガンド)の発現を濃度依存的に調節する所見が得られた。CXCL11がsiRNAにより事前に発現抑制されたHEL細胞を用いて再度感染・共培養を実施した所、simvastatinの有する抗ウイルス作用が減弱することが確認された。以上の結果から、simvastatinのhCMV複製抑制は宿主におけるCXCL11の発現調節を介して誘導される可能性が示唆された。
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