研究分担者 |
池住 洋平 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70361897)
唐沢 環 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (30447601)
河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)
山口 賢一 新潟大学, 医歯学系, 講師 (50108023)
山本 格 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30092737)
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研究概要 |
本プロジェクトの目的は、日本ウズラの卵から卵白の一部を除去する事により胎生期の栄養障害を起こし、それが腎の発育不備や腎機能障害を喚起し、成長後、巣状糸球体硬化症(focal segmental nephrosclerosis,FSGS)に移行するかを生体、臓器、及び、細胞レベルの解析を用い検討することにある。胎生期の栄養障害を起こしたウズラでは、孵化時の体重や腎重量が低く、腎糸球体の上皮細胞(podocyte)の足突起や基底膜の発育が遅れる。平成22年度の主な結果は1)受精卵の卵白除去率(5~8%,8-9%,10%)が上昇すると孵化率が低下し、腎糸球体数が(cortex, juxtamedullaryとも)減少し,形が大きく、不均等になった。2)Podocyteの数が減少しCapillary loopの融合と内腔にフィブリン沈着がおきた。3)メサンギウムの領域が有意に広がり、PAMやlaminin抗体で染色される基底膜状物質が増加し,capillry loopとBowman上皮細胞が一部癒着した。4)一方、Podocin,N-Cadherinなどの細胞間接着分子は良く維持された。5)孵化後数日のウズラでglucocorticoidsの上昇をみた。此れ等の所見はヒトのFSGSに類似する。また、capillary loopを支持するメサンギウムの変化が大切であることを示す。近年、先進国における唇出生体重児(2500g以下)の発生頻度が上昇しており、日本では6.3%(1990)が9.7%(2007)に増加した(人口動態統計)。更に世界的にFSGSが増加傾向にあるが、その成因やバイオマーカーは不明である。我々は、新潟大学医歯学総合病院小児科の腎グループと共同研究を行い、動物実験の所見を、池住ら(分担研究者)が集積中の低出生体重児と小児腎疾患(特にFSGS)の相関にトランスレイトする事を試みている。5)腎生検206例中15例がFSGSと診断され、15例中5例(33.3%)が低出生体重をしめし、正常児の率(9.7%)より高い。低出生体重-FSGSの糸球体は有意に大きく、一方podocyteが減少していた。6)Serum creatinineが上昇しeGFRが低い。平成22年度はさらに此れ等を発展させ、以下の目的を検討する.目的1:栄養低下群におけるネフロン数の減少はnephrogenesisの低下かapoptosisの増加によるか。目的2:栄養低下群における糸球体メサンギウムは対照群と比較し組成が異なるか(支持組織の不備)、目的3:栄養低下群の血管反応性は対照群と比較し上昇しているか(高血圧傾向)、目的4:新潟市小中学校の検尿で蛋白尿や血尿の所見のでた児童と出生児低体重と相関が認められるかを検討する。更に出生児低体重をrisk factorとして、学校検尿で蛋白尿など腎所見の認められた小児で将来の腎疾患の予防が出来ないか考える。
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