Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)では精神発達遅滞(MR)が約3割もの多くの患者に合併する。このMRの発症に関与する遺伝子の同定は高次脳機能解明の手懸りとして、世界中で大きく注目されている。最近私たちは、MRを合併したDMD患者の遺伝子診断をする中で、ジストロフィン遺伝子の異常に加えて、X染色体上の未知の遺伝子の断片が挿入された複合遺伝子異常例を少なからずの例で見出した。これはDMDに合併するMRの発生に関与する遺伝子の解明の世界で初めての手掛かりである。本研究は、MRの責任遺伝子として手掛かりが得られた断片から、これらの一群の新規遺伝子のクローニングを行い、分子生物学的・分子遺伝学的手法を駆使してMRの責任遺伝子であることを解明する世界最先端のものである。 本年度においては、1つの新規遺伝子の分子遺伝学的な解析を進め、発現部位の解析などを進めた。さらに、その遺伝子の配列から予想される機能についてインフォマーティクスの手法を駆使した解析を試みた。また、ジストロフィン遺伝子の重複の異常の発生にMRの発症に関与している遺伝子が同時に異常を生じていることを明らかにした。一方、ジストロフィン遺伝子内でMR発症に関与する新たな分子の探索も行った。その結果ジストロフィン遺伝子に新しい分子種を同定することに成功した。この新しい分子種がジストロフィン遺伝子に異常を有するDMDのMR発症機序の解明を可能とするものと期待される。
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