1. てんかん患者の遺伝子解析 電位依存性Caチャネルは、4つのサブユニットからなる。48例のてんかん患者の末梢血から、ジェノミックDNAを抽出し、アルファ1サブユニットをコードするCACNA1A遺伝子の解析を行った。CACNA1A遺伝子の各エキソン毎にイントロンの部分にプライマーを設計し、PCR条件を決め、全エキソンの直接塩基配列を決定した。これらを遺伝子配列データベースを基に変異を確認したところ、患者の約10%に8種類のミスセンス変異を検出した。健常人96人での頻度を比較したところ、8種類のうち6種類はてんかん患者において頻度が高く、残り2種類においては同頻度であった。このことから、6種類の変異については、病的意義があるものと考え、次の実験を進めた。 2. 変異型CACNA1AのcDNAの作成 上記で検出された変異型CACNA1A遺伝子の機能的変化をパッチクランプ法を用いて解析するため、6種類のcDNAを作製した。cDNAをHEK293細胞に強制発現させ、各変異型が機能していることを確認した。現在、正常型と比較して、どのような機能的変化が起きているのか、統計学的に処理しているところである。 3. モデルラットによるin vivo実験 Scnla遺伝子に変異をもつラットとCacnala遺伝子に変異をもつラットを交配することによって、個体の表現型がどのように変化するか検討した。しかし、Scnla遺伝子ヘテロ接合Cacnala遺伝子ヘテロ接合(F1)どおしを交配させてF2を作製しようとしたところ、生れてくる仔の遺伝子型に著しい偏りが生じていることが分かった。また、両ラットは遺伝的背景が異なっており、F2での表現型に遺伝的背景の差異が影響することも明らかになった。そこで、遺伝的背景を統一するため、現在戻し交配を繰り返しているところである.
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