(1)難治てんかん患者における遺伝的けいれん感受性遺伝子の解析 難治てんかんの一種である乳児重症ミオクロニーてんかん(ドラベ症候群)患者48人を対象に、電位依存性カルシウムチャネルのα1サブユニットをコードするCACNA1A遺伝子の解析を行った。具体的にはCACNA1A遺伝子のエキソンをはさむようにイントロンにプライマーを設計し、全47コーディングエキソンをPCRで増幅。直接塩基配列決定法により、変異を検索した。その結果、患者48人のうち21人(43.8%)において9種類のCACNA1A遺伝子変異/多型が検出された。このうち6種類についてはこれまでに報告されていない新規変異/多型であった。変異/多型の大部分は、電位依存性カルシウムチャネルの細胞内ドメインに存在し、神経伝達物質の放出にかかわる蛋白との相互作用が変化する可能性が示唆された。 変異型CACNA1A遺伝子のcDNAを構築し、HEK293細胞に強制発現させ、パッチクランプ法を用いて、変異型チャネルの電気生理学的特性を検討した。変異型CACNA1A遺伝子がコードするチャネルは、電依存性活性化において、Ba電流が正常型よりも大きく、機能獲得型を示した。 (2)Scn1a遺伝子変異ラット(HISSラット)とCacna1a遺伝子変異ラット(GRYラット)の交配によるてんかん表現型の変化の検討 両遺伝子変異ラットは遺伝的背景が異なっていたため、F344/NS1c近交系ラットに統一するように戻し交配を実施し、F12-F15世代において、HISSラット、GRYラット、ダブル変異ラット(HISSラットとGRYラットの交配)3群の表現型を検討した。身体所見(6週齢から12週齢までの体重増加)、5週齢での高体温感受性けいれん、長時間脳波モニタリングによる6週齢から12週齢までの自発てんかん発作について比較した。 Scn1a遺伝子変異にCacna1a遺伝子変異が加わると、成長障害がより顕著になること、熱性けいれんを起こしやすくなること、自発てんかん発作が新たに出現し多彩な発作症状が認められることが明らかになった。複数のけいれん感受性遺伝子が合わさることよって、てんかんが重症化することを示した意義は大きい。
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