研究概要 |
これまでにSNPアレイ解析から神経芽腫200例からALK遺伝子を(Nature 455:271,2008)、リンパ腫から6番長腕のuniparental disomy (UPD)からA20を、骨髄増殖性疾患の11番のUPDからCBL遺伝子を同定した(Nature 459:712-716,2009)。この手法を用いて、小児の固形腫瘍のUPD領域からゲノムインプリンティングの網羅的な探察を行った。 今年度は、ユーイング肉腫(Ewing sarcoma family of tumors, ESFT)99検体(細胞株17株を含む)を用い、ALK遺伝子の変異解析を行ったところ、新規のミスセンス変異が4例に認められた。その一部について機能解析を行ったところ、ウェスタンブロットにおける自己リン酸化の亢進、siRNAによるALK knockdownでの細胞増殖の抑制、コロニーアッセイにおいて足場非依存性増殖、ヌードマウスアッセイにて腫瘍形成が観察された。また、ALK阻害剤の投与にて、ALK変異を持つESFT細胞株においても高い効果を認めた。神経芽腫のみでなく、一部ESFTにおいてもALKが関与することや治療の標的になることが示唆された。ALKの発現はESFT46例全例で確認され、ESFTの中では極めて稀な鼻腔原発の2例にkinase domainの胚細胞変異(活性型)を確認した。 横紋筋肉腫(RMS)50検体(細胞株8株、新鮮腫瘍42例)の解析では、RT-PCRを施行した29検体中17検体(59%)でALKの高発現を確認し、SNPアレイでは新鮮腫瘍1検体(胞巣型)でALK領域の高度増幅を検出した。ALK阻害剤により一部細胞株で増殖抑制効果が認められた。ALKはRMSの発症・進展に関与している可能性が示唆された。
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