研究概要 |
本研究は、乾癬表皮細胞に内在する情報伝達機構の異常と、それに付随する乾癬表皮の表現型との関連の解明を目的としている。 表皮細胞における95kD B-Raf isoformの発現および消滅機構と、それに付随する表皮の動態変化の解析では、95kD B-Rafのノックダウンにより表皮細胞の増殖低下が示された。これは、乾癬における95kD B-Rafの維持に対比される所見と考えられる。正常表皮では、増殖の低下したconfluent状態で、95kD B-RAfが消失することも示された。 また従来、リンパ管マーカーとして知られるpodoplaninを用いて、乾癬と創傷治癒表皮では、正常表皮と異なり、podoplaninが発現することを明らかにし、これがSTAT3の活性化を介する経路であることを証明した。興味深いことに、表皮細胞のIL22処理により、同じくStat3依存性にpodoplaninが誘導されることも明らかとなり、これは近年の乾癬のTIP-DC-Th17細胞学説における、IL22-Stat3経路の活性化と、それに基づく表皮細胞増殖亢進に対応する所見と考えられる(Honma, Iizuka, et al: SID2010: concurrent oral presentation採択)。現在、われわれは、この経路と上述のB-Raf,Raf-1-MAP kinase系、さらにIFN-γ、TGF-β経路との関連も検討しており、事実、IFN-γとTGF-βが、やはりSTAT3依存性にpodoplaninの発現増強を起こすことも見出している。特にIFN-γは、乾癬皮疹部でも発現増強が確認されており、病態との関連に興味がもたれる。
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