研究課題
乾癬は皮膚科領域を代表する疾患であり、表皮の過増殖、血管内皮の過剰増殖、炎症性細胞浸潤を特徴とし、炎症性角化症に分類される。NF-kBは、TNF受容体、IL-1受容体、Toll-like receptor(TLR)、紫外線照射などの下流に存在し、抗アポトーシス作用に加えて、種々の免疫反応、炎症反応において重要な働きを持つことが知られている。乾癬病変部に大量のTNF-αが存在すること、TNFシグナル伝達経路を阻害する生物学的製剤が乾癬の治療に有効であること、TNFシグナル伝達系におけるNF-kBの重要な役割を考えれば、乾癬の発生機序に、NF-kBが関与していることが予想される。乾癬発生機序におけるNF-kBの役割を、NF-kBのnegative regulatorであるBc1-3およびIkBNS欠損マウスを用いて乾癬モデルマウスを作成し、また培養表皮細胞を用いたin vitro実験を加えて、明らかにすることを目的とする。本年度はIkBNS欠損マウスを用いて乾癬モデルマウスの作成とその解析を行った。IkBNS欠損マウスを交配にて増殖させ、欠損マウスを40匹以上得ることができた。まず乾癬が自然発症するか否かについて、50週まで経過観察したが、明かな皮膚病変は発現しなかった。そこで次に創傷誘発モデル、TPA誘発モデルについて検討を行うべくマウスを増やしている段階である。並行して、培養マウス表皮細胞および培養ヒト表皮細胞を中心にin vitro実験を行い、その結果をマウスモデルの結果と比較し、NF-kBの乾癬皮膚における役割を明らかにするためにIkBNS欠損マウスから角化細胞を培養し、増殖させた後凍結保存した。さらに、ヒト角化細胞を用いる実験のためにBc1-3,IkBNSを強制発現するレンチウィルスベクターを作成し、力価を測定した。次年度は角化細胞を用いた解析を重点的に行う。
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