研究概要 |
乾癬は皮膚科領域を代表する疾患であり、表皮の過増殖、血管内皮の過剰増殖.、炎症性細胞浸潤を特徴とし、炎症性角化症に分類される。NF-kBは、TNF受容体、IL-1受容体、Toll-like receptor (TLR)、紫外線照射などの下流に存在し、抗アポトーシス作用に加えて、種々の免疫反応、炎症反応において重要な働きを持つことが知られている。乾癬病変部に大量のTNF-αが存在すること、TNFシグナル伝達経路を阻害する生物学的製剤が乾癬の治療に有効であること、TNFシグナル伝達系におけるNF-kBの重要な役割を考えれば、乾癬の発生機序に、NF-kBが関与していることが予想される。乾癬発生機序におけるNF-kBの役割を、NF-kBのnegative regulatorであるBcl-3およびIkBNS欠損マウスを用いて乾癬モデルマウスを作製し、また培養表皮細胞を用いたin vitro実験を加えて、明らかにすることを目的とする。本年度は培養マウス表皮細胞および培養ヒト表皮細胞を行いて細胞内シグナル伝達についての解析を行った。IL-22の刺激によりSTAT3のリン酸化が誘導され、その後S100,IL-8,HB-EGFなどの乾癬関連遺伝子が誘導されることを確認し、その際にBcl-3が誘導されることを明かにした。Bcl-3の機能を、ドミナントネガティブ効果を有するレンチウィルスやsiRNAにてあらかじめ抑制しておくとIL-22依存性乾癬関連遺伝子の誘導は抑制され、逆にBcl-3を強制発現させておくとIL-22による乾癬関連遺伝子誘導は増強された。さらに乾癬の病変部におけるBcl-3の発現を免疫組織学的に解析したところ、正常皮膚と比較して明らかに発現が増強していた。以上より乾癬の病態においてはNFkB,Bcl-3が重要な役割を果たしていると推測される。
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