研究課題
大規模分子疫学的調査:人種差による環境因子(喫煙、紫外線、大気汚染)対する皮膚老化の差違(ドイツデュッセルドルフ大学環境医学研究所との共同研究)-JAGE project (JAGE=Study of extrinsic skin ageing of Japanese and German women)の疫学調査をすすめ、解析をすすめた。ドイツ人では早期にしわができやすく、日本人ではしみができやすいこと、しみに関しては大気汚染との関連が統計上明らかとなった。また、以前の疫学調査と同じように、喫煙としわの関係が明らかとなった。さらに、喫煙者のTH17が末梢血中に多いことが明らかとなり、今後、乾癬や掌瞭膿疱症患者と喫煙に関しても、解析予定である。一方、これまでの研究では水溶性タバコの煙抽出物を使用したが、タバコの煙には3800以上の成分があるともいわれ、水溶性以外に水不溶性の成分が含まれる。その中には、Aryl hydrocarbon receptor(AhR)のシグナル伝達経路を活性化するものが含まれていることが推定されている。タバコ煙抽出液の水不溶性成分とAhRの関係を分析するために、ヘキサンに溶解するタバコの煙抽出液(ヘキサン抽出液)を作成し、培養人繊維芽細胞を使用した。ヘキサン抽出液は、AhRのシグナル伝達経路であること示すチトクロームP1B1 (CYP1B1)発現の有意の上昇させ、また有意にMMP-1発現誘導した。また、CYP1B1とMMP-1誘導は、AhRのアンタゴニストである3-メトキシ-4-ニトロ・フラボンとα-ナフトフラボンで有意に抑制された。すなわち、ヘキサン抽出液によって、AhR経路の活性化によって剛P-1表現を誘導することを明らかとした。このことは、タバコ煙がAhR経路を活性化することを示しただけでなく、AhR経路が、環境因子による皮膚老化に関与することを示唆するものである。
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