本年度の研究では主に薬疹患者の末梢血から、ヘルペスウイルス(HSV)特異的に反応するT細胞を分離し、その分画においてTeffとTregのバランスがどのように調節されているかの検討を行った。 Teffは主にHSV特異的CD8T細胞分画に存在しているのに対し、Tregは主にHSV特異的CD4T細胞分画に存在していた。重症薬疹のうちStevens-Johnson症候群(SJS)やToxic epidermal necrolysis(TEN)では、HSV特異的CD8Teffのサイトカイン産生が亢進しているが、それはHSV特異的Tregの機能が低下していることを反映していた。それに対し、drug-induced hypersensitivity syndrome(DiHS)ではHSV特異的Tregが著明に増加しており、そのためHSV特異的CD8Teffのサイトカイン産生やキラー活性が抑制されていることが明らかになった。DiHSではこのため単球内に潜伏感染しているHSVの再活性化が起こり、それがまたHSVに特異的でないbystander Tregを増やし、それが他のヘルペス科ウイルスの再活性化をきたすという連鎖が起こることが明らかになった。 このようなHSV特異的Tregは他の疾患(例えば天疱瘡)でも見られ、これの増加がウイルスを再活性化させるとともに、この機能異常が自己免疫疾患につながっていく可能性が示された。 このようにあるヘルペス科ウイルスに特異的なTregとTeffのバランスが、様々な疾患における皮膚傷害の程度を決めているとともに、潜伏ウイルスの再活性化、ひいては自己免疫疾患の発症につながることが明らかになった。
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