(1)広汎性発達障害(PDD)疑いの児は、就学時健診において阿賀野市で9/477名(1. 88%)、新潟市で11/919名(1. 19%)であり、危険因子としては阿賀野市では父親の高年齢、新潟市では出生時仮死が挙がった。(2)脳画像研究において、PDDでは定型発達群に比して有意にMRI画像上の視床体積が減少していた。また、手の模倣課題中の近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)所見において、PDDでは定型発達群で認められる前頭前皮質活性の左側優位性が減少していた。(3)分子遺伝研究において、PDDとTPH2遺伝子多型との名目上有意な関連を示したが、マイクロRNA137多型との有意な関連は同定できなかった。(4)中間表現型研究において、5-HTTLPR多型はPDDの右内側前頭前野の神経発達障害に影響を与えている可能性および5-HTR1A遺伝子多型がPDDの細分化された臨床的特徴に関連があることを明らかにした。 At Risk Mental State(ARMS)に関しては、就学時健診で確認することが困難であり、研究期間の間にARMS症状を呈した児童は存在しなかった。今後、この確立した研究基盤をもとに今後30年に渡って疫学研究および生物学的マーカーの探索を推進していく。
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