次世代自己・バルーン拡張型薬剤溶出被覆ステントの開発、改良のために、前年度に引き続き、過去の研究を見直し、海外動向を調査し、研究開発の正当性と妥当性とを検証しつつ、研究を行った。 新素材のニオブ合金を血管内留置ステントの材料として用いることは二重の記憶メモリという物性学的に新規性があるため、既存の自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントの長所を生かした新しいステント開発が期待されてきた。しかし、生体内留置したことのない新しい金属材料であることから、使用にあたり、金属のアレルギー試験、生体適合性、安全性試験等が欧米医用安全基準や国内の医薬品医療機器総合機構から審査に必要事項として求められている。特に、毒性試験を成犬やミニブタを用いて検証するには、長期の実験期間を要するため、試作ステントによる安全性試験は断念した。現時点ではステントに用いる材料としてニオブ金属はニチノール材に替わる物質と判定できない。そこで、本年度はコンピュータシュミレーションによるステントの金属疲労等を中心に研究した。既存に開発したセンダイステントを用いたシュミレーションでは拡張系に応じた最適な短腕と湾曲率とを発見できた。この研究の成果は本学医工学研究科に引き継がれ、地域イノベーション研究、領域創世研究課題として引き継がれていく予定である。 臨床的なアプローチでの検討では、金属疲労等によるステント破断の症例は国内外で報告されているが、我々の施設では未経験である。今後多くの症例の蓄積が必要と思われる。
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