放射線治療による抗腫瘍効果を、直接作用による腫瘍の細胞死に加えて、生体の免疫応答を介した間接的な抗腫瘍効果を含めて再評価することにより、放射線治療をさらに進化させ、免疫応答を介した生体に与える効果を増幅し、全身的な治療効果が期待できる集学的な治療法を「免疫化学放射線治療」として開発することを目的として本研究を実施した。我々は腫瘍内の免疫応答を再現するために、B16担癌マウスの腫瘍特異的CTL治療モデルを用いた。C57BL/6マウスにB16メラノーマ細胞を接種し皮下腫瘍を形成した後、(1)処置なし、(2)腫瘍特異的CTL(Thy1.1^+、1.Ox10^7/匹)治療を行った。CTL治療後1日、3日、5日、7日に腫瘍を摘出し腫瘍内へ浸潤したリンパ球(CD45^+細胞)を解析した。腫瘍体積は治療群では3日後以降から増加が抑制され7日後で無治療群と比較して有意な差を認めた。腫瘍内に浸潤したCD45^+細胞数は無治療群では大きく変動しなかったが、治療群では1日後と比較して5日後に7.5倍に増加した。腫瘍内のThy1.1^+CD8^+細胞数とCD11b^+Ly6C^+Gr1^+細胞数はそれぞれ治療後3日後と5日後に最大となった。治療後5日後の腫瘍内のCD45^+細胞の内60%以上がCD11b^+Ly6C^+Gr1^+細胞であった。またそれらの細胞はReactive oxygen species (ROS)とNitric oxide (NO)を産生していた。腫瘍内に腫瘍特異的CTLによる免疫応答を誘導すると、抗腫瘍効果を示したが、腫瘍特異的CTLの腫瘍内浸潤に伴ってROSとNOを産生する免疫抑制性のCD11b^+Ly6C^+Gr1^+細胞(Myeloid derived suppressor cell ; MDSC)が腫瘍内に浸潤した。放射線治療後の免疫応答を増強するためには、腫瘍内に浸潤するMDSCの制御を合わせて治療戦略を構築する必要があると考えられた。
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