本年度は、特に子宮の非造影血管造影及び動態の検討について成果が得られた。 子宮動脈の非造影検査は以前小山らが1.5T装置で描出を試みたが、今回3T装置での応用を試みた。生殖可能年齢においては、内腸骨動脈から子宮動脈の分岐レベルについては、ほぼ描出を達成している。更に末梢側の描出や病的状態での子宮動脈の状態を非造影にて描出できるよう検討中である。これと関連し、血管描出の研究が進んでいる肝の非造影検査で、1.5T装置と比較して3T装置で肝動脈描出最適化のための各種パラメーターの検討を先行させ、子宮動脈撮影へのフィードバックを行った。 子宮蠕動については、不妊患者において着床が問題となる時期にホルモン値の測定と合わせてMRIでの子宮蠕動の観察を行っている。同時に子宮動脈の撮影も行い、上記の描出能の改善により評価可能な画像が得られるようになっている。海外施設との共同研究により、子宮筋腫患者では子宮血流を直接に改変する子宮動脈塞栓術後に蠕動が再出現することが示され、子宮筋腫縮小の影響のほかに血流の変化と蠕動の関連についても関連が示唆された。子宮動脈血流及びその変化と不妊との関連については定量的なデータはほとんどなく興味深いが、検討には今後の症例の蓄積が必要である。また、ホルモンの蠕動への影響を探るものとして本年度は産後女性における検討も行った。さらに蠕動評価法の客観性は今までも議論になっていたが、今年度はこの点につき、画像解析の専門家と新たな測定法・ソフトウェアの開発を行った。経験豊富な読影者に匹敵するデータを自動的に取得することができ、学会発表を行った。ソフトウェアはまだプロトタイプの段階であるが、新たな定量的手法を導入し3D撮像データへの応用を含めた動態画像研究の加速化をめざし検討を継続中である。 子宮筋層の拡散テンソル画像については、シーメンスから提供を受けた開発版の拡散強調画像撮像シーケンスを使用しパラメータの最適化を行うことで、生体内での子宮筋層の線維走行の可視化に成功した。現在国際学会誌に投稿準備中である。
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