ジェネレータより得られる^<68>Gaを標識核種とするPET薬剤の開発を目指し、本研究では、標的組織の認識部位と金属核種結合部位とを一分子内に独立して有する二官能性キレートという分子設計概念の基に、安定なGa-DOTA錯体において2つのCOOH基が錯体形成に関与していないことに着目して、このCOOH基に、機能性分子を導入するという新規薬剤設計を確立する。まず、2分子の低酸素領域認識部位(metronidazole : MN)を導入した二官能性キレート、DOTA-MN2を合成し、半減期が長く、取り扱いの容易な^<67>Gaによる標識を行った。標識反応については、マイクロ波照射により、短時間での合成に成功した。次に、マウス乳がん細胞(FM3A)を移植したマウスに、^<67>Ga-DOTA-MN2、別途合成したMNを1分子有する^<67>Ga-DOTA-MN1、MN骨格を持たない^<67>Ga-DOTAをそれぞれ投与し、経時的に各臓器の放射能を測定した。その結果、^<67>Ga-DOTA-MN2と^<67>Ga-DOTA-MN1は、^<67>Ga-DOTAと比べて腫瘍組織に有意に高く集積し、また、^<67>Ga-DOTA-MN2の腫瘍/血液比は、^<67>Ga-DOTA-MN1と比較して高い傾向を示したことから、MN骨格をDOTAに2分子導入する有用性が示された。さらに、腫瘍組織における放射能分布を評価すべく、^<67>Ga-DOTA-MN2のオートラジオグラフィを行い、pimonidazoleをマーカーとした免疫組織化学染色と比較したところ、両者の局在はよく一致していたことから、^<67>Ga-DOTA-MN2が低酸素領域を認識していることが確認された。以上の結果は、Ga-DOTAを基本骨格とする二官能性キレートの分子設計の有用性を示すものと考える。
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