ジェネレータより得られる^<68>Gaを標識核種とするPET薬剤の開発を目指し、本研究では、標的組織の認識部位と金属核種結合部位とを一分子内に独立して有する二官能性キレートという分子設計概念の基に、安定なGa-DOTA錯体において2つのカルボキシル基が錯体形成に関与していないことに着目して、このカルボキシル基に、機能性分子を導入するという新規薬剤設計を確立する。本年度は、悪性腫瘍に発現するケモカイン受容体、CXCR4リガンドペプチドAc-TZ14011を2分子導入したGa標識化合物(Ga-DOTA-TZ2)の評価を行った。CXCR4発現細胞(CXCR4-CHO)および非発現細胞(CHO)を移植した担がんマウスにおける標識体の生体内分布を評価したところ、^<67>Ga-DOTA-TZ2はCXCR4-CHO腫瘍へ高く集積したが、CHO腫瘍にも同等に集積した。また、肺や肝臓へも非常に高く集積した。Ac-TZ14011を用いた阻害実験の結果、肺への集積は90%以上抑制されたのに対し、肝臓への集積は僅かに増加した。また、Ac-TZ14011のアミノ酸を全てD体に置換したペプチド(CXCR4に対して親和性を示さない)を用いた阻害実験でも、Ac-TZ14011による阻害実験と同様の結果を得た。これらの結果は、^<67>Ga-DOTA-TZ2の生体内分布がCXCR4に依存しないことを示唆する。^<67>Ga-DOTA-TZ2は1分子に10個の第一級アミンを有し強いカチオン性を示すことから、凝集、高分子化し、肺や肝臓へ取り込まれた可能性がある。今後、カチオン性を低減させることで体内動態の改善を図り、多価効果を検証する必要がある。
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