研究課題/領域番号 |
21390353
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 哲 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30215454)
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研究分担者 |
平野 聡 北海道大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (50322813)
宮本 正樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (40333611)
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キーワード | PEDF / 血管新生 / 遺伝子治療 / 細胞治療 |
研究概要 |
クローニングしたPEDFのcDNAを導入したレンチウイルスベクター(Lv-PEDF)を用い、PEDFを過剩発現する食道癌細胞株(TE8PEDF、HEC46PEDF)を樹立した。これら細胞株は培養における増殖能に変化はなかったが、培養上清にはELISA法およびWestern blot法によってPEDFタンパクの存在が確認され、血管内非細胞の増殖および遊走を抑制することが示された。これは既に報告済みの膵癌細胞株と同様の結果であった。一方で、これら細胞株をヌードマウスに移植した場合に、TE8PEDFは膵癌細胞株と同様に腫瘍の増大が抑制されたが、HEC46PEDFは抑制されなかった。さらにTE8PEDF腫瘍を再度培養した後に移植を行うと、その腫瘍は増大が抑制されないことが明らかになった。つまり、これらの細胞株には血管新生阻害因子に対する耐性が存在することが判明した。しかし、それぞれのマウスにおいては血中の単核球成分(PBMC)が著名に減少し、同時に血管内非前駆細胞(EPC)も減少していることが明らかになった。つまりPEDFは骨髄に作用し、PBMCおよびEPCの双方の増殖を阻害していると考えられた。 一方、研究の問題点として、ヒト血清中のPEDFはELISA法で検出可能であったのに対し、マウス血清中のPEDFはELISA法およびWestern blot法での検出が困難であることが判明した。さらに、ホーミングを利用したデリバリーシステムを構築するために、採取したマウスPBMCにLv-PEDFをトランスフェクションしたが、癌細胞株と異なり、遺伝子導入効率がきわめて不良であり、PEDFを過剰に発現する血球細胞の樹立が困難であることが判明した。これは、先に得られた結果から、血球細胞が産生するPEDFが血球細胞自身の増殖を阻害しているためである可能性が考えられた。
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