研究概要 |
(1)APC欠損(Min)マウスの腹腔内にadiponectin1.5mg×3回を投与すると、小腸に発生するadenomaの個数と大きさは有意に低下した。一方、胃癌、大腸癌組織におけるadiponectin受容体(AdipoR1 and R2)のmRNA,タンパクの発現量をRT-PCR免疫染色で検討したところ、健常部と比べて共に有意に低下していた。また、胃培養癌細胞において、TGF-βを添加すると、0.1-1ng/mlの濃度で、AdiPoR1とAdipoR2は有意に低下した。以上より、腹腔内脂肪由来のadiponectinは大腸癌の発生を抑制する環境因子として重要な役割を有している一方で、TGF-βはadiponectinの受容体を低下させることによって、その抑制作用を回避させる機序を介して癌の進展に促進的な作用を発揮することが推測された。 (2)胃癌術後の内臓脂肪量と皮下脂肪量の変化を臍レベルのCT画像を用いたFATscanにてretrospectiveに検討すると、迷走神経温存群と切離群との間で、皮下脂肪量の変化には差を認めなかったが、内臓脂肪量は迷走神経温存群で優位に高値に保たれていた。迷走神経は腹腔内脂肪量を調節する生理学的機能を有している事が示唆された。
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