1. 炭酸アパタイト:薬物のデリバリーとしてはアドリアマイシンが効率的に炭酸アパタイトへの封入が可能であった。電子顕微鏡で粒子サイズを測定すると60-80nmの粒子が数個集まり200nm程度のサイズとなっていた。この粒子はpH5.8-6.0で破壊される。癌細胞への取り込みを追跡すると、炭酸アパタイトに封入することで、短時間で細胞内に侵入することができることが分かった。炭酸アパタイトにFITC標識したsiRNAを封入し細胞内への取り込みを追跡した。リポフェクション法よりも早くに細胞内に入り、survivinなどの蛋白発現を速いタイミングでノックアウトすることができた。ヌードマウスの尾静脈に投与すると肝臓や腎臓などへの取り込みはFITC標識siRNA単体の方が多く、皮下腫瘍への取り込みは炭酸アパタイトに封入したFITC標識siRNAが多くみられた。 2. 癌浸潤:大腸癌の先進部の浸潤細胞を特異的に検出する抗C4.4A抗体を作成した。大腸癌130例の検討で、癌の細胞膜にC4.4A蛋白が発現するタイプは、治癒切除後の大腸癌でも後に血行性転移を生じることが示された。論文発表を終え、抗C4.4A抗体は国内特許申請を終え、PTC申請準備中である。 3. 微小転移:OSNA法による大腸癌リンパ節転移の検出精度は2mm間隔のHE染色と同等ということを多施設共同の臨床性能試験により示した。論文発表とともにOSNA法による大腸癌リンパ節転移診断の保険適応を厚生労働省より承認していただくための基礎データとなった。 4. 低酸素関連:肝転移の乏血管領域より新規低酸素誘導遺伝子JMJDIAに着目し、大腸癌の悪性度との関連を動物モデルで示し、大腸癌の臨床データベース解析からJMJDIAが新規予後因子となることを示した。
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