大動脈瘤は破裂死に至る臨床上重要な疾患であるが、発症原因は未だ不明である。大動脈瘤罹患率は本邦においても増加傾向にあるが、外科手術が唯一の治療法である現状では、破裂死亡数の大幅な減少は期待できないため、病態解明と、より理想的な治療法開発が急務である。本研究の目的は、大動脈瘤壁へのメカニカルストレスによって炎症と細胞死が惹起され大動脈瘤が進展するという独自の病態仮説を実証し、それに基づく新たな大動脈瘤治療法を開発することである。そのために本年度は以下の3つの研究計画を実施した。 【研究1. ヒト瘤壁組織中のASC/Caspase-1解析】 ヒト大動脈瘤壁におけるASCの発現を証明するために、手術時にヒトサンプルを収集した。現在、ASC蛋白発現をウエスタンブロット法と免疫染色法で解析中である。 【研究2. メカニカルストレスセンサーとしてのASCの役割と分子機序解明】 大動脈瘤病態で重要なマクロファージと平滑筋細胞をマウスより初代培養し、メカニカルストレスとして培養細胞伸展システム(STREX社製)を用いて一軸方向の周期的伸展刺激を与えた。ストレス応答としての炎症惹起に着目し、培養上清中へのIL-1β分泌をELISA法で定量した。その結果、マクロファージが伸展性のストレス刺激に応答して、IL-1β分泌を亢進した。ASCKO(ノックアウト)マウス由来細胞だと、この応答が抑制されたことから、仮説どおりASCお関与が示された。 【研究3. 大動脈瘤におけるASCの役割解明-予防実験-】 マウス大動脈瘤の形成・伸展にASCが不可欠な役割を果たすことを実証するために、高濃度カルシウム局所刺激による動脈瘤モデルをASC KOマウスと野生型マウスで作製した。現在、大動脈瘤径ならびに組織所見を解析中である。
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