研究課題/領域番号 |
21390363
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片野 光男 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10145203)
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研究分担者 |
中村 雅史 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30372741)
野村 政壽 九州大学, 大学病院, 講師 (30315080)
大西 秀哉 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (30553276)
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キーワード | 腫瘍幹細胞 / Gli1 / 治療標的分子 / 免疫不全マウス / 乳がん / 膵がん / 前立腺がん / 低酸素 |
研究概要 |
本研究は、種々の癌腫に対して効果の期待できる抗がん剤開発の候補分子としてHedgehog(Hh)シグナル系の標的分子かつ転写活性を有するGlioma-associated oncogene homlog 1 (GIi1)の機能を解析することであり、昨年度に続き種々の成果を手にした。ここでは、本年度の当初計画であるGli1制御による治療実験の成果に焦点を当て、報告する。 得られた成果は、次のようである。 1)乳がん細胞において多分化能および造腫瘍能が高くGli1発現の高いcD24-/cD44+細胞が乳がん組織においても実際に存在するかを確かめるために、組織中のCD24-/CD44+細胞分布を半定量的に解析する方法を開発(疑似マイクロダイセクションと内部標準を置いた三重蛍光免疫染色法の組み合わせ)し、cD24-/cD44+細胞がGli1を高発現する細胞であることを乳がん切除組織において初めて確認し論文として報告した(Kai et al.Cancer Sci, 2011)。 2)上記乳がん組織でのGli1の高発現を確認した上で、臨床における治療を想定し、Gli1高発現cD24-/cD44+をセルソーターにて分取し免疫不全マウスに移植し、移植後5日目にHhシグナル阻害剤であるシクロパミンを移植腫瘍近傍に接種するという新たな免疫不全マウス移植系により治療実験を実施した。期待したように明らかな抗腫瘍効果を得ることができた(Kai et al.Cancer Sci, 2011)。現在、これらマウスより採取した移植細胞におけるGli1発現の変化を解析中である。 3)また、膵がん細胞においては、がん組織で問題となる低酸素環境によりSmoの転写上昇を介してGli1発現および浸潤能を亢進させるという新たなGli1発現制御機序を見出した(Onishi et al.Cancer Sci 2011)。 以上、Gli1が有望な治療標的であることを支持する成果を得た。
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