研究概要 |
1. 末梢血由来単核球細胞からの樹状細胞大量増幅技術: これまで、商業的に入手可能であるヒト臍帯血由来CD34陽性細胞から、従来法と比較して1,000-10,000倍のDC増幅システムの構築に成功した。本法の特徴として、以下が挙げられる。 (1) GM-CSF+SCFの組合せが最適、 (2) この条件で培養するだけで、特殊な操作無く次第にCD11c陽性DCの比率が増えていくこと、 (3) 抗原刺激に伴うT細胞の活性化作用は、従来法で得たDCと同等以上であること、 (4) 途中から培養条件を従来法ヘスイッチすると、さらにT細胞刺激能が増強されること。 初年度は上記を踏まえ、健常人ボランティアの末梢血から、同様の方法でDC増幅が可能であるか、またその機能は遜色ないか(表面マーカー、サイトカイン発現、抗原貪食能、アロMLRなど)について、詳細な検討を加えた。その結果、増幅効率は約200倍と低下するものの、DCとしての性質は従来法、あるいは臍帯血増幅DCと全く遜色が無いことが明らかとなった。 2. 腹水がんモデルにおける治療レジメの最適化 これまでCT26(マウス大腸がん)を用いて検討してきたが、皮下腫瘍には顕著な効果を示すにも関わらず、腹水がんになるとSeV/DC治療は無効であり、その理由としてVEGFが重要かつ、SeVを用いて内因性sFLT-1を発現するDCを腹腔内へ投与すると、腹水量が減るだけでなく、生存期間を延長し、また腫瘍特異的CTL誘導能が回復することも明らかにした。 初年度は、この系をさらに追求し、SeV/DCが最大効果を発揮する細胞数、投与間隔等、臨床応用の際に最も重要となるパラメータについて、徹底的に最適化を行った。その結果、(1)体重比はヒト換算で10^9細胞以上、(2)毎週の投与、(3)末梢でのワクチンではなく腹腔内投与、が最も有効であることが明らかとなった。(784字)
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