1.PLGA粒子のin vivoにおけるモニタリングシステムの確立 粒子の取り込み、薬剤の放出、薬剤に暴露あるいは暴露されていない細胞の分離などを可能にするシステムを構築した。PLGA粒子そのものをトレース可能とするために、蛍光物質Dioでラベルした。また、模擬薬剤として蛍光色素であるHoechst 33342を含有させ、組織で徐放させることができた。Hoechst33342含有粒子投与により核は濃度依存性に蛍光を発することが確認された。さらに、flow cytometryを併用することにより、Hoechst33342をマーカーとして模擬薬剤到達細胞や非到達細胞を分離することが可能であり、到達濃度の半定量化も可能であった。このシステムは、あらゆる薬剤投与法に適応でき、PLGA粒子を用いたターゲッティング治療の解析に有用であると考えられた。 このシステムを用いて、経口投与、注腸投与について検討してみると、予想に反しPLGA粒子は消化管粘膜にほとんど取り込まれないことが明らかとなった。従って、経口投与による薬剤到達には粒子表面の修飾をはじめ何らかの工夫が不可欠である。 2.PPARγアゴニストによる炎症抑制効果 回腸嚢炎に対する抗炎症作用を念頭に起き、単核球細胞株U937のPPARγアゴニストの炎症性サイトカイン遺伝子の発現抑制効果について検討した。U937細胞ではGW1929およびpioglitazoneの前処理によって、LPS刺激におけるIL-1β、TNF-αのmRNA発現が抑制された。PPARγアゴニストのmRNA発現抑制効果は、Hoechst33342を加えても変化を認めなかった。以上より、少なくともある特定のシステムでは、Hoechst33342と薬剤の両者を含有したPLGA粒子を用いたドラッグデリバリーの詳細を解析することが可能であると考えられた。
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