研究課題
膵・胆道癌は早期発見と外科切除、分子標的治療薬を含む化学療法等での集学的治療が、治療成績向上を図る上で最重要である。そこで膵・胆道癌の増殖等に深く関わる細胞内signal伝達径路の血清中リン酸化蛋白及び癌切除標本での発現量を比較検討し、診断マーカー探索及び将来の分子標的治療を用いた個別化治療の臨床応用を目指した。【方法】膵癌患者26例と健常人25例の血清で18種類の血清中リン酸化蛋白測定し階級別cluster解析によるリン酸化蛋白profileを比較検討。膵癌26例中切除可能の22例、切除標本におけるリン酸化蛋白の免疫染色を行い血清中との発現量の相関等を検討。更に血清中のリン酸化蛋白発現量の比較を膵癌・膵炎・健常人3群間でも実施。【成績】膵癌の重要な1経路であるRas/Raf/MEK/ERK signal径路の構成蛋白p-MEK、p-ERK、下流のp-P90RSK、p-CREB、更にp-Aktとp-IKBaの6つが膵癌患者で健常人と比較し存在量が有意に増加。p-MEKとその下流signalであるp-ERKの発現量の有意な正の相関を認めた(R=0.57,P<0.00002)。それら血清に対応した膵癌切除標本での発現を免疫染色法で確認すると、p-MEK、p-ERKは膵管癌細胞内の細胞質と核内に高発現、診断能ではp-ERKのAUCは0.94であった。予後では血清中p-ERK存在量の高値群が手術根治度と共に多変量解析で独立予後因子となりcluster解析のsubclass分類でも予後良好・不良群の2群に分けられた。p-ERK値は膵癌・膵炎・健常人の3群間で有意差が認められ(P<0.00001)、膵癌と膵炎・健常人(非担癌)でのAUC値はCA19-9よりp-ERK値がより優れていた。新規血清膵癌バイオマーカーとして血清中リン酸化蛋白測定の有用性が示された為、これら内容を論文発表した。
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