研究概要 |
新生血管標的化分子を融合させたRGD-TNF-α遺伝子治療の作用機序に関する解析を行うとともに、免疫遺伝子や悪性化に関与する因子に対するRNA干渉の併用を検討し、全身的抗腫瘍効果を有する集学的がん遺伝子治療を開発することが本研究の目的である。 本年度の主な研究成果を以下にまとめる。 1) TNF-α遣伝子治療のがん選択的殺細胞効果の機序解明 リコンビナントTNF-α投与群とTNF-α遺伝子導入群で膵がん細胞株のROS産生を比較した。更に、Rac1 siRNAを導入し、Rac1の有無でROS産生と細胞傷害度を比較した。リコンビナントTNF-α投与群ではROSは産生されなかったが、TNF-α遺伝子導入群で明らかなROS産生と細胞傷害が認められ、Rac1 siRNAでROS産生と細胞傷害は阻害された。 2) TNF-αを軸とした複数の免疫遺伝子同時発現による特異的抗腫瘍免疫賦活化の検討 LARC,SLC,RANTES,IL-12,CD40L,GM-CSF発現プラスミドを作成した。ナノ高分子キャリアーを用いてTNF-α遺伝子と組合わせてCT26大腸がん腹膜播種マウスの腹腔内に投与し、抗腫瘍効果を比較した。TNF-αとCD40L,GM-CSF併用群がTNF-α単独群より抗腫瘍効果が高く、TNF-α導入後に異時性に導入する投与法が同時投与に比較して抗腫瘍効果が高かった。現在、作用機序を解明中である。 3) がん悪性化因子YB-1を標的としたmiRNA遺伝子治療の検討 YB1-miRNA発現プラスミドを作成。ヌードマウス腹膜播種モデルにナノ高分子キャリアーを用いて腹腔内投与し、抗腫瘍効果を検討した。生食投与対照群と比較して明らかに腹膜播種は抑制された。
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