研究概要 |
新生血管標的化分子を融合させたRGD-TNF-α遺伝子治療の作用機序に関する解析を行うとともに、免疫遺伝子や悪性化に関与する因子に対するRNA干渉の併用を検討し、全身的抗腫瘍効果を有する集学的がん遺伝子治療を開発することが本研究の目的である。本年度の主な研究成果を以下にまとめる。 (1)TNF-αを軸とした複数の免疫遺伝子同時発現による特異的抗腫瘍免疫賦活化の検討 前年度、TNF-αとCD40L,GM-CSF併用群がTNF-α単独群より抗腫瘍効果が高いという実験結果が得られており、本年度はその機序に抑制性T細胞(Treg)、CD11b+Gr1+suppressor細胞、Th1/Th2バランスの関与を検討した。CT26大腸がん腹膜播種モデルを作成し、遺伝子治療1週間後に採取した血清中サイトカイン濃度をビーズアレイで測定したところ、TNF-α、CD40L,GM-CSF遺伝子併用群がTNF-α遺伝子単独群に比較して、Th1の指標となるIL-2,IFN-γが高値で、Th1優位に改善が認められた。脾臓を採取してフローサイトメーターで解析した結果、TNF-α遺伝子治療によりTregの減少が示唆された。 (2)がん悪性化因子YB-1を標的としたmiRNA遺伝子治療の検討 前年度はヌードマウス胆嚢がんと卵巣がん腹膜播種モデルで、YB1-miRNA遺伝子治療の抗腫瘍効果を報告したが、本年度は膵がん腹膜播種モデルにおいて治療効果の再現性を確認した。また、YB-1の治療標的としての再現性を確認するために、YB1 decoyペプチド遺伝子発現による治療モデルも検討し、miRNAと同様に抗腫瘍効果を認めた。In vitroでの解析であるが、YB1-miRNA遺伝子治療はHUVEC血管内皮細胞の増殖を抑制し、癌腫によらず腫瘍血管を標的とする汎用性の高い治療となる可能性が示唆された。
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